イントロダクション
WordPressは、世界中で最も利用されているコンテンツ管理システム(CMS)で、全ウェブサイトの約43%がWordPressを使用しています。その圧倒的なシェアにより、WordPressは個人ブログから大規模な企業サイトまで、幅広く採用されています。しかし、人気があるゆえにサイバー攻撃のターゲットになりやすいのも事実です。特に、セキュリティ対策が不十分なサイトは、ハッキングやデータ漏洩といったリスクにさらされる可能性が高くなります。
この記事では、WordPressサイトを安全に運営するために欠かせないセキュリティ対策について、詳しく解説します。基本的な対策から高度な強化策、さらにセキュリティインシデントが発生した際の対処法まで、幅広くカバーしていますので、この記事を参考に、サイトをしっかりと守ってください。
1-1. 目的
この記事の目的は、WordPressサイトを運営する皆さんが、自サイトのセキュリティを強化するために必要な知識と対策を身につけることです。具体的なリスクや脅威を理解し、日常的に実践できるセキュリティ対策をお伝えします。
1-2. なぜWordPressのセキュリティが重要なのか?
WordPressサイトが攻撃者によって侵害されると、個人情報の漏洩やサイトの停止、さらにはSEOへの悪影響など、さまざまな問題が発生する恐れがあります。特に、ハッキングされたサイトはGoogleからブラックリストに登録され、検索結果に表示されなくなるリスクもあります。だからこそ、WordPressサイトのセキュリティは、ビジネスやブログ運営において非常に重要な要素です。
2. WordPressのセキュリティリスク
2-1. 一般的な脆弱性
WordPressは非常に利便性の高いCMSですが、同時にいくつかの脆弱性も抱えています。例えば、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)、クロスサイトリクエストフォージェリ(CSRF)などが一般的な脅威として挙げられます。こうした脆弱性は、適切な対策を講じないと、サイトが攻撃者に乗っ取られるリスクを高めます。(下部に用語解説を記載しています。)
2-2. ブルートフォース攻撃とその対策
ブルートフォース攻撃とは、攻撃者が自動化されたツールを使って、無数のパスワードを次々と試し、強引にログインしようとする手法です。特に、弱いパスワードやデフォルトのユーザー名(例: “admin”)を使っているサイトは、この攻撃の対象になりやすいです。このような攻撃に対抗するためには、強力なパスワードの設定や、ログイン試行回数を制限するプラグインの導入が効果的です。
2-3. プラグインやテーマの脆弱性
WordPressの強みである豊富なプラグインやテーマは、サイトの機能を拡張するために非常に便利ですが、これらが脆弱性を含んでいる場合、サイト全体のセキュリティリスクが高まります。特に、公式リポジトリ以外からダウンロードしたプラグインやテーマには注意が必要です。セキュリティホールを防ぐためには、使用していないプラグインやテーマを削除し、常に最新のバージョンに更新することが大切です。
3. 基本的なセキュリティ対策
3-1. 強力なパスワードと二要素認証の導入
強力なパスワードを使うことは、WordPressのセキュリティを高めるための基本です。パスワードには、英数字と特殊文字を組み合わせたランダムな文字列を使用し、推測されにくいものを設定しましょう。また、ユーザー名に「admin」を使うのは避けるべきです。さらに、二要素認証(2FA)を導入することで、セキュリティが一段と強化されます。これにより、パスワードだけでは不正ログインを防ぎきれない場合にも、安全性を確保できます。
3-2. 定期的なバックアップの重要性
どれだけセキュリティ対策を施していても、リスクを完全に排除することはできません。万が一に備えて、定期的にサイト全体のバックアップを取ることが欠かせません。バックアップをスケジュール化し、自動的に行うプラグインを使うことで、データの喪失やサイトの破損から素早く復旧できるようにしましょう。
3-3. WordPressとプラグインの更新
WordPress本体やプラグイン、テーマは、定期的に更新されます。これにより、新しい機能が追加されるだけでなく、セキュリティホールも修正されます。更新を怠ると、既知の脆弱性が攻撃者に悪用される可能性が高まります。セキュリティアップデートがリリースされた際には、できるだけ早く適用するように心がけましょう。
4. 追加のセキュリティ強化策
4-1. セキュリティプラグインの導入
WordPressには、セキュリティを強化するためのプラグインが豊富に揃っています。例えば、WordfenceやiThemes Securityなどは、ファイアウォールの設定やマルウェアスキャン、ログイン試行回数の制限など、多岐にわたるセキュリティ機能を提供しています。これらのプラグインを適切に設定することで、サイトの防御力を大幅に高めることができます。
4-2. ファイルとディレクトリの権限設定
サーバー上のファイルやディレクトリの権限設定を適切に行うことも、セキュリティを保つ上で非常に重要です。誤った権限設定がされていると、攻撃者がサイトのファイルにアクセスしたり、変更を加えたりするリスクがあります。一般的には、ファイルには644、ディレクトリには755の権限を設定し、特にwp-config.phpファイルは厳格に管理することが推奨されます。
4-3. SSL証明書の導入とHTTPSの使用
SSL証明書を導入して、サイト全体をHTTPSで運用することは、セキュリティの基本です。HTTPSを使用することで、データがユーザーとサーバーの間で送受信される際に暗号化され、通信内容を第三者が傍受するリスクが軽減されます。また、GoogleもHTTPSをランキングの要因としているため、SEOにも効果があります。SSL証明書は、ホスティングプロバイダから取得でき、設置も比較的簡単です。
4-4. WAFを設定する
WAF(Web Application Firewall)は、ウェブアプリケーションを保護するためのファイアウォールです。WAFは、ウェブトラフィックを監視し、悪意のあるリクエストや不正アクセスをブロックする役割を果たします。特に、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)などの攻撃を防ぐのに効果的です。WAFを設定することで、サイト全体のセキュリティが大幅に強化されます。クラウドベースのWAFサービス(例: Cloudflare、AWS WAF)を利用することで、簡単に導入が可能です。(下部に用語解説を記載しています。)
4-5. XMLRPC防御を設定する
XMLRPCは、リモートでWordPressサイトにアクセスするためのプロトコルですが、これが攻撃者によって悪用されるケースがあります。特に、ブルートフォース攻撃やDDoS攻撃の手段として使われることが多いです。そのため、XMLRPCを無効化するか、必要に応じて防御策を講じることが推奨されます。プラグインを使用してXMLRPCを無効にするか、.htaccessファイルでアクセスを制限することで、これらのリスクを軽減できます。
4-6. reCAPTCHAの導入
reCAPTCHAは、スパムやボットによる不正アクセスを防ぐためのツールです。特に、ログインページやコメント欄、問い合わせフォームなどにreCAPTCHAを導入することで、自動化された攻撃を効果的にブロックできます。Googleが提供しているreCAPTCHAは、ユーザーが操作しやすいインターフェースを持ちながらも、強力なセキュリティを提供します。WordPressでは、専用のプラグインを使用することで、簡単にreCAPTCHAを導入できます。
4-7. .htaccessでのセキュリティ強化設定
.htaccessファイルを利用することで、WordPressサイトのセキュリティをさらに強化することができます。.htaccessは、ディレクトリ単位で設定を行うファイルで、サーバーへのアクセス制御やリダイレクト設定など、さまざまなセキュリティ設定が可能です。例えば、管理画面へのアクセスを特定のIPアドレスに制限したり、ディレクトリのインデックス表示を無効にすることで、セキュリティリスクを低減できます。また、ファイルの書き換えを防ぐための権限設定も、このファイルで行えます。
4-8. 固定IPでログイン制限
固定IPでログインを制限することで、WordPressサイトの管理画面への不正アクセスを防ぐことが可能です。特定のIPアドレスからのみログインを許可する設定を行うことで、第三者によるブルートフォース攻撃やその他の不正アクセスを効果的にブロックできます。この設定は、.htaccessファイルやセキュリティプラグインで簡単に行うことができます。固定IPアドレスを持っている場合は、この方法でセキュリティを強化するのがおすすめです。
5. セキュリティインシデントの対処法
5-1. ハッキングされた場合の対応
万が一、サイトがハッキングされてしまった場合には、速やかな対応が求められます。まずは、サイトへのアクセスを制限し、攻撃者がどのように侵入したのかを調査します。その後、影響を受けたファイルやデータベースを修復し、バックアップからの復旧を検討しましょう。必要に応じて、専門家に相談し、セキュリティホールを修正することが重要です。
5-2. インシデント後の復旧手順
サイトが正常に稼働するようになった後も、復旧手順を徹底することが大切です。バックアップからの復旧後は、再度セキュリティスキャンを行い、残っている脆弱性がないかを確認します。また、全ユーザーのパスワードをリセットし、再設定を促すことも検討しましょう。インシデント後の復旧計画を事前に準備しておくことで、迅速かつ効率的な対応が可能になります。
5-3. 今後のセキュリティ強化策
セキュリティインシデントを経験した後は、再発防止のためにセキュリティ対策を見直すことが必要です。過去の攻撃を教訓に、セキュリティ対策を強化していきましょう。定期的なセキュリティ監査やログの監視、スタッフのセキュリティトレーニングを実施するなど、予防策を積極的に取り入れることで、今後のリスクを最小限に抑えることができます。
6. Q&A
Q1 セキュリティプラグインは複数導入したほうが良いですか?
A1 複数のセキュリティプラグインを導入すると、競合が発生する可能性があるため、1つの信頼できるプラグインを選んで、しっかり設定することをお勧めします。
Q2 無料のSSL証明書と有料のSSL証明書の違いは何ですか?
A2 無料のSSL証明書でも基本的なセキュリティは確保できますが、有料の証明書はより高度な暗号化やサポートが含まれていることが多いです。ビジネスの規模やニーズに応じて、適切な証明書を選ぶと良いでしょう。
Q3 WordPressの自動更新機能は有効にすべきですか?
A3 自動更新機能を有効にすることで、セキュリティアップデートが即座に適用され、既知の脆弱性から守られることになります。ただし、更新によってテーマやプラグインが動作しなくなるリスクもあるため、定期的にバックアップを取ることが重要です。
Q4 WordPressのログインURLを変更するべきですか?
A4 はい、WordPressのログインURLをデフォルトの「wp-admin」や「wp-login.php」から変更することで、ブルートフォース攻撃のリスクを低減できます。簡単にURLを変更できるプラグインもありますので、導入を検討すると良いでしょう。
Q5 WordPressのセキュリティ対策としてホスティング会社の選び方に気をつけるべき点はありますか?
A5 もちろんです。ホスティング会社を選ぶ際には、セキュリティ機能が充実しているかどうかを確認しましょう。例えば、SSL証明書の提供、定期的なバックアップ、DDoS対策、ファイアウォールの有無などが重要なポイントです。また、カスタマーサポートが充実しているかも考慮すべきです。
Q6 セキュリティのためにWordPressのデフォルトテーブル接頭辞を変更するべきですか?
A6 はい、WordPressのデフォルトのテーブル接頭辞「wp_」を変更することで、SQLインジェクション攻撃のリスクを減らすことができます。これにより、攻撃者がテーブル名を推測しにくくなり、サイトのセキュリティが強化されます。
Q7 サイトに登録しているユーザーが多い場合、どのようにセキュリティを強化すれば良いですか?
A7 複数のユーザーがサイトに登録している場合、各ユーザーの権限を慎重に管理することが重要です。管理者権限を必要以上に与えないようにし、パスワードの強制リセットや二要素認証(2FA)の導入を検討しましょう。また、ユーザーアカウントのアクティビティを定期的に監視することも有効です。
Q8 WordPressのセキュリティについて、定期的にチェックするべき項目は何ですか?
A8 定期的に確認すべき項目として、以下が挙げられます:
・WordPressやプラグイン、テーマの最新バージョンへの更新状況
・バックアップの実行状況とデータの保管場所
・セキュリティスキャンの実施と結果の確認
・ログイン履歴や不審なアクセスの監視
Q9 旧バージョンのプラグインやテーマを使い続けるのは危険ですか?
A9 旧バージョンのプラグインやテーマは、セキュリティホールが修正されていない場合が多いため、使用し続けるのはリスクが高いです。開発が終了したプラグインやテーマは特に注意が必要で、代替の最新のものに置き換えることを検討するべきです。
Q10 WordPressのセキュリティ設定で、一般的に見落とされやすいポイントは何ですか?
A10 見落とされがちなポイントとして、以下が挙げられます:
・ファイル編集の無効化:管理画面からのテーマやプラグインの編集を無効にすることで、攻撃者が不正なコードを埋め込むのを防げます。
・デフォルトユーザー名の変更:「admin」のような一般的なユーザー名は避けるべきです。
・XML-RPCの無効化:XML-RPCは特定のプラグインで必要ですが、通常は無効にしておくのが安全です。
7. まとめ
WordPressのセキュリティを確保することは、サイト運営者にとって欠かせない責任です。適切なセキュリティ対策を講じることで、サイトを安全に保ち、ユーザーの信頼を得ることができます。基本的な対策から高度なセキュリティ強化策まで、さまざまな手法を組み合わせて、常に最新のセキュリティ状態を維持しましょう。万が一のインシデントにも迅速に対応できるよう、事前の準備も忘れずに行うことが成功の鍵です。
8. 用語解説
SQLインジェクション
SQLインジェクションは、ウェブアプリケーションのデータベースに対して、攻撃者が悪意のあるSQLクエリを挿入することで、データベースを不正に操作する攻撃手法です。例えば、ユーザーからの入力が適切に検証されずにSQLクエリに組み込まれると、攻撃者はデータベースの中身を盗み見たり、データを改ざんしたりすることが可能になります。この攻撃に対処するためには、ユーザー入力のサニタイズ(無害化)や、パラメータ化クエリを使用してSQLインジェクションを防ぐことが重要です。
クロスサイトスクリプティング(XSS)
クロスサイトスクリプティング(XSS)は、攻撃者がウェブページに悪意のあるスクリプト(通常はJavaScript)を埋め込むことで、ユーザーのブラウザ上でそのスクリプトが実行される攻撃手法です。この攻撃により、攻撃者はユーザーのクッキーやセッション情報を盗み出したり、フィッシング攻撃を仕掛けたりすることが可能になります。XSSを防ぐためには、ユーザーからの入力を適切にエスケープ処理し、HTMLコンテンツとして安全に表示することが求められます。
クロスサイトリクエストフォージェリ(CSRF)
クロスサイトリクエストフォージェリ(CSRF)は、ユーザーが意図しないリクエストを第三者が強制的に実行させる攻撃手法です。具体的には、ユーザーがすでにログインしているサイトに対して、攻撃者が別のサイトから不正なリクエストを送り、そのリクエストが認証されたユーザーの権限で実行されてしまうというものです。CSRFを防ぐためには、重要なリクエストに対して、トークン認証を行う(CSRFトークンを使用する)ことで、リクエストの正当性を確認することが有効です。
XMLRPC
XMLRPCは、リモートでウェブサーバーにアクセスして操作を行うためのプロトコルです。WordPressでは、外部から投稿をしたり、モバイルアプリを使ってサイトを管理する際に使われます。しかし、この機能が有効になっていると、攻撃者がブルートフォース攻撃やDDoS攻撃に利用する可能性があるため、セキュリティリスクを伴います。セキュリティの観点からは、XMLRPCを無効にするか、特定の用途に限って使用する防御策を講じることが推奨されます。
.htaccess
.htaccessは、Apacheウェブサーバーで使用される設定ファイルで、ディレクトリごとにサーバーの動作を制御するために利用されます。このファイルを使って、ディレクトリへのアクセス制限、リダイレクト設定、URLの書き換え、さらにはセキュリティ強化(たとえば、特定のIPアドレスからのアクセス制限やディレクトリのインデックス表示を無効にするなど)を行うことができます。.htaccessは非常に強力なツールですが、誤った設定を行うとサイトが正常に動作しなくなるリスクがあるため、慎重に扱う必要があります。
reCAPTCHA
reCAPTCHAは、Googleが提供するセキュリティサービスで、ウェブサイトに対するスパムやボットの攻撃を防ぐために使用されます。reCAPTCHAは、ユーザーが「私はロボットではありません」と確認するステップを追加することで、人間とボットを区別し、自動化された不正なアクセスをブロックします。これにより、ログインページやコメント欄、問い合わせフォームなどでの不正アクセスを効果的に防ぐことができます。WordPressでは、専用のプラグインを使って簡単に導入することが可能です。
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この記事を書いた人
岩渕 裕プロデューサー
筋トレ、ランニング、料理、ザイグル(家焼き肉)、サイクリング、動画制作が趣味です。健康第一。