月次レポートを提出したあと、「で、どうすればいいですか?」と聞かれた経験はないでしょうか。GA4の数字は追えているのに、提案に変わらない。この原因はデータ不足ではありません。数字を提案に変換する「型」を持っていないことにあります。この記事では、Web制作ディレクターがGA4のデータから月次改善提案を組み立てる手順を、5つのステップに分けて説明します。GA4の操作方法ではなく、出てきた数字をどう提案に変えるかに絞って扱います。
なぜ月次レポートは「報告」で止まるのか
数字を並べる作業と、次の一手を決める作業を、別々のものとして扱っていないからです。
よくあるのは「セッションが前月比 -12% でした」で終わるレポートです。これは事実の記録であって、受け取った側は何をすべきか判断できません。数字が正確でも、判断材料としては未完成です。
報告と提案の違いは、扱う時間軸にあります。報告は過去に起きたことを記述します。提案は次に何をするかを決めます。提案として成立させるには、次の4点が必要です。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 主因 | 変化の何割が、どこで起きたか |
| 仮説 | なぜそれが起きたと考えられるか |
| 打ち手 | 誰が、何を、いつまでに |
| 検証方法 | 実施後、何を見れば成否がわかるか |
以降の手順は、この4点を埋めるための作業です。
手順1 — 追う指標の絞り込み
月次で追う指標は3つまでに絞ります。
GA4は数百通りの切り口でデータを出せます。だからこそ、全部を載せると読み手は優先順位を判断できません。指標が多いレポートは、丁寧なのではなく、判断を相手に丸投げしている状態です。
選び方は、ビジネスゴールからの逆算です。最終的に何が増えれば成功なのか(KGI)を決め、そこに至る途中の数字(KPI)を2つ選びます。
BtoBのサービスサイトなら、次のような組み方になります。
- KGI: 問い合わせ完了数
- KPI1: サービス詳細ページの閲覧数
- KPI2: フォーム到達から完了までの率
この3つであれば、どれが動いたかで課題の位置が特定できます。「詳細ページは見られているが、フォームで落ちている」のように、次に見る場所が決まります。
一方、PV数を主指標に置くことは勧めません。PVは増えても問い合わせが増えないことがあり、その場合に何をすべきかを判断できないためです。指標は、動いたときに打ち手が決まるものを選びます。
手順2 — 変化の分解と主因の特定
「全体が減った」で止めず、どこが何ポイント動かしたかまで分解します。
セッション全体の増減は、チャネルごとの増減の合計です。したがって、全体の変化を各チャネルの寄与ポイントに割り戻せます。
具体例で説明します。サイト全体のセッションが 10,000 から 8,800 に減ったとします。
| チャネル | 前月 | 当月 | 増減 | 全体への寄与 |
|---|---|---|---|---|
| Organic Search | 6,000 | 5,100 | -900 | -9.0pt |
| その他合計 | 4,000 | 3,700 | -300 | -3.0pt |
| 全体 | 10,000 | 8,800 | -1,200 | -12.0pt |
この形にすると、「セッション -12% のうち 9pt は Organic Search の減少による」と言い切れます。原因の所在が1つに絞れたので、次の手順で調べる対象も1つに決まります。
ECサイトの場合は、売上を次の3要素に分解します。
売上 = セッション数 × 転換率(CVR) × 客単価
売上が落ちたとき、集客の問題なのか、サイト内の問題なのか、商品構成の問題なのかが切り分けられます。打ち手がまったく変わるため、この分解は必ず行います。
GA4でこの分解を行うには、「探索」から自由形式レポートを作り、ディメンションに「セッションのデフォルトチャネルグループ」、指標に「セッション」と対象のキーイベントを置きます。標準レポートでも確認できますが、前月との比較を並べるなら探索のほうが扱いやすくなります。
手順3 — 仮説への確度づけ
仮説には必ず確度を書きます。断定できるものと、まだ確かめていないものを混ぜません。
未検証の推測を断定で書くと、外れたときに提案全体の信頼を失います。逆に、確度さえ明示されていれば、外れても「未検証だったものを検証した」という結果が残ります。
確度は3段階で十分です。
| 確度 | 意味 | 書き方 |
|---|---|---|
| 確定 | データで裏が取れている | 「〜が原因です」 |
| 可能性が高い | 傍証はあるが、直接の証明はない | 「〜の可能性が高いと考えられます」 |
| 未検証 | 推測の段階 | 「〜の可能性があります(未検証)」 |
手順2の例を続けます。Organic Search の減少について、Search Console で対象ページの掲載順位を確認します。
- 掲載順位が下がっていた場合 … 順位低下が主因である可能性が高い
- 順位は変わらず表示回数だけ減っていた場合 … 検索需要の季節変動である可能性がある(未検証)
ここで注意したいのが、相関を因果として書かないことです。「サイト改修を行った月に問い合わせが増えた」は、改修が原因だと証明していません。同じ月に広告出稿や季節要因が重なっていれば、そちらの影響かもしれません。
未検証と判断した仮説には、確かめる方法をセットで書きます。「次月、広告出稿を止めた週の自然流入を比較する」といった内容です。確かめ方まで書いてあれば、それ自体が次の提案になります。
手順4 — 施策の具体化
施策は「誰が・何を・いつまでに」の粒度まで落とします。
この粒度に届いていない提案は、実行されずに終わります。実行されない提案は、書かなかったのと同じです。
差が出るのは次のような形です。
| 実行されない書き方 | 実行される書き方 |
|---|---|
| フォームを改善する | 弊社側で入力項目を9→5に削減し、8月末までにテスト環境で確認 |
| コンテンツを見直す | 御社にて対象3ページの実績数値をご提供のうえ、弊社が9月第2週までにリライト |
| SEOを強化する | 弊社が対象ページのタイトルタグを改善し、8月20日までに反映 |
右側は、読んだ人が自分の作業かどうかを判断できます。左側は判断できません。
提案する施策の数は3〜5件に収めます。10件並べても、すべてに着手されることはありません。優先順位は、インパクト(改善したときの効果の大きさ)と実現容易性(工数と実行のしやすさ)の2軸で決めます。効果が大きくても3か月かかる施策より、効果は中程度でも今月中に着手できる施策を先に置いたほうが、成果が早く出ることは珍しくありません。
手順5 — 検証方法の事前設定
施策を実施する前に、成否の判定方法を決めておきます。
後から決めると、都合のよい指標を選んでしまいます。「CVRは変わらなかったが滞在時間は伸びた」といった報告は、事前に判定基準を決めていなかったときに起こります。
決めておく項目は3つです。
- 見る指標 … 手順1で決めた指標のうち、どれを見るか
- 観測期間 … いつからいつまでを比較するか
- 判定ライン … どの値になったら成功とみなすか
フォーム改善の例では、次のようになります。
- 見る指標: フォーム到達から完了までの率
- 観測期間: 実施翌週から4週間
- 判定ライン: 現状12%に対し、14%以上で成功
観測期間を決めるときは、比較する期間の条件を揃えます。繁忙期と閑散期を比べると、施策の効果か季節の影響かを切り分けられません。前年同月との比較を併用すると、季節要因を除いた判断がしやすくなります。
また、施策が複数同時に走っている月は、個別の効果を分離できないことがあります。その場合は「分離できない」と明記したうえで、全体としての結果を報告します。分離できていないものを、できたことにして書かないでください。
まとめ
- 月次レポートが提案にならないのは、数字を提案に変換する型がないためです。主因・仮説・打ち手・検証方法の4点を埋めることで、報告は提案に変わります
- 変化は「全体が減った」で止めず、どのチャネル・どの要素が何ポイント動かしたかまで分解します。原因の所在が絞れて初めて、打ち手が1つに決まります
- 仮説には確度を書き、施策は「誰が・何を・いつまでに」まで具体化します。そして実施前に判定基準を決めておきます
まずは来月のレポートで、指標を3つに絞ることから始めてみてください。全体を変えなくても、報告の質は変わります。
月次レポートの設計や運用改善のご相談は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。現在のレポートを拝見したうえで、改善の余地をお伝えします。
